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調査

国分寺崖線保全調査~野鳥調査崖線の野鳥

調査の概要

調査の目的

ひとつは国分寺崖線上及びその周辺域における鳥類の生息状況を明らかにし、希少な鳥類の保全、また種の多様性の確保を目的としました。 また、国分寺崖線の保全策を講じていくための基礎資料の蓄積、および周知をふたつめの目的としました。

調査の考え方

国分寺崖線に生息する鳥類の種及び個体数を把握するため、崖線の緑地を代表する地域を任意に定め、サンプリング調査を行いました。本調査では、

  • 神明の森みつ池
  • 成城三丁目緑地
  • 岡本静嘉堂緑地
  • 等々力渓谷緑地

の4ヶ所を崖線の代表的な緑地として調査対象地区に選定しました。

調査項目および内容

調査は以下の2つの方法で実施しました。

1)定点調査

崖線の緑地は比較的幅があり、常緑広葉樹が広く分布するため、外側からでは林内の見通しが利かない場合があります。また、秋季、冬季は鳥類がさえずらないため、生息種を発見しにくいものです。このため、生息する鳥類を的確に把握できるように、崖線樹林の内外に任意の観察地点を設け、この場所で1時間程度の定点調査を行いました。調査時期および地点数、時間帯は以下のとおりです。

調査時期 非繁殖期 2002年10月14日
2002年11月26日
2003年 1月28日
繁殖期 2003年 4月25日
2003年 6月10日
調査地点数 各調査対象地区ごとに2~3ヶ所
調査時間帯 9:30~10:30(各地点ごとに多少の違いがある)

観察は基本的には目視で行い、補助的に8倍程度の双眼鏡を使用しました。なお、周辺住宅地も視界に入る場所もありますが、記録対象は崖線樹林のみとしました。

記録項目は種名、個体数、生息環境(落葉樹、針葉樹、水辺等)、利用場所(樹冠部、林床部等)、行動(採餌、休息等)としました。

調査結果は所定の調査票に記録し、データの解析に使用しました。

2)ルートセンサス

ルートセンサス調査は、調査対象地区に生息する鳥類の量的な把握を目的として実施しました。調査時期および地点数、時間帯は以下のとおりです。

調査時期 非繁殖期 2002年10月4日
2002年11月26日
2003年 1月28日
繁殖期 2003年4月25日
2003年 6月10日
調査地点数 各調査対象地区ごとに1ルート
調査時間帯 8:00~ 9:00 (各地点ごとに多少の違いがある)

調査はあらかじめ設定されたルートをゆっくりとした速度で歩きながら、見聞きした鳥類を記録しました。観察する幅はルートの片側25M(両側で50m)を対象としました。また観察は1ルートについて2回(往路、復路)行いました。

記録項目は種名、個体数、生息環境(落葉樹、針葉樹、水辺等)、利用場所(樹冠部、林床部等)、行動(採餌、休息等)としました。

調査結果は所定の調査票に記録し、データの解析に使用しました。記録された情報は、利用部位等の定性的な解析については、往復のデータ(2回分)を使用しましたが、個体数密度等の解析時には往復データの平均値を使用しました。

調査地の環境の概要

調査結果の概要

「みつ池」「成城三丁目」「岡本」「等々力」の4ヶ所で定点調査及びルートセンサス調査を行った結果、非繁殖期の調査(10月、11月)では9目23科 42種、繁殖期(4月、6月)の調査では9目23科30種の計10目26科50種の鳥類が確認されました(確認種全種リスト)。

確認された鳥類の大半は都市部でも普通に見られる、いわゆる「都市鳥」でしたが、中にはオオタカなど都市部では珍しい猛禽類やカモ類等の水鳥も確認されました。このため、年間の記録種数は、都区内の緑地を対象とした調査としては比較的多い結果となりました。

また、樹林性鳥類だけを見てもオオルリやキビタキ、ルリビタキ、サンコウチョウなどが確認されています。世田谷区内の国分寺崖線の樹林地は、面的には広いものではありませんが、生息種にから判断すると、都市近郊の低山帯と同等のレベルにあるといえます。

非繁殖期と繁殖期の確認種数を比べると、非繁殖期が42種、繁殖期が30種となっており、非繁殖期の方が多くなっています。これは、都内の緑地が山地で繁殖期を過ごした鳥類の越冬地として利用されるためで、非繁殖期にあたる冬季に種数および個体数が多くなるのは南関東では一般的な状況であると言えます。

非繁殖期の調査結果

月別の鳥類の確認種数は、10月は18種、11月は29種、1月は34種と繁殖期終了後に種数が徐々に増加する傾向にありました。3回の調査のうちすべてで確認された種は、オオタカ、キジバト、コゲラ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、モズ、エナガ、シジュウカラ、メジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、オナガ、ハシボソガラス、ハシブトガラスの15種でした。

地域別の鳥類の確認種数では、水鳥(ウ、カモ、カモメ類)を除いた種数(→注釈)は、「みつ池」30種、「岡本」26種、「成城三丁目」23種、「等々力」18種の順となっており、「みつ池」が最も多い結果となりました。

「みつ池」では、他の地区では見られなかったアカゲラ、ルリビタキ、アカハラ、キビタキなど、比較的良好な樹林に生息する種が確認されています。普段は人の立ち入りが禁止されているこの地区は、渡り鳥には好適な生息環境となっているものと考えられます。

一方、最も種数が少なかったのは、「等々力」でこの地区は渓谷に沿って発達した樹林が生育しているものの、人間の往来が多いため、「みつ池」とは対照的な環境です。こういった環境の違いが種数にも反映されていると考えられます。

なお、「みつ池」では3回の調査全てで、オオタカの生息が確認されました。オオタカは「種の保存法」で国内希少野生動植物に指定されている種で、主に鳥類を餌とする猛禽類です。非繁殖期とはいえ本種が11月~1月の間生息しているということは、一般的には、餌動物の生産基盤となる緑地が良好な状態にあることを裏付けるものであるといえます。ただし、餌の大半がドバトである場合は、緑地との関わりは低くなるため、オオタカの生息から緑地の価値を判断するためには、食痕調査等の裏付けが必要となります。

注釈:
崖線の緑地における鳥類の生息状況把握を目的とした調査であるため、地区毎に比較する際には、樹林の有無に関わらず生息する種(水鳥)は除いて解析しました。これは、樹林環境の優劣に係わらず、水場の有無が出現種数に影響してしまうためです。

繁殖期の調査結果

月別の鳥類の確認種数は、4月は26種、6月は18種でした。4月に種数が多かったのは、シロハラ、ツグミなどの冬鳥が残っていたことに加え、キビタキやオオルリなど繁殖地への移動途中の種が多く確認されたためであると考えられます。

一方、6月の確認種数は18種で4月に比較すると大きく減少していますが、この時期に生息が確認されている種は、大半が国分寺崖線の樹林地及び周辺域で繁殖を行っている種であるため、限られた種になるのは当然の結果で、この値は「子育て」のために崖線の緑地に依存している鳥類の種数を表したものです。

地域別の種数では、水鳥(ウ、カモ、カモメ類)を除いた種数は「みつ池」21種、「岡本」20種、「成城三丁目」17種、「等々力」9種の順となっており、順位は非繁殖期同様でした。一般的には森に生息する鳥類の種数を決定する要因は、「森林構造」、「森林規模」ですが、国分寺崖線のような都市緑地においては、「人との関わり」も生息種数に影響を及ぼす重要な要素になります。

「みつ池」は、樹林の階層構造が発達しており、良好な樹林地環境であることと、人が立ち入り出来ないという状況であるため、生息種数が多く、「等々力」は林齢としては、「みつ池」と大きな差はないものの、森の幅が狭く、中央部を人が往来する状況にあるため、4地区の中では最も条件が悪く、生息種数が少ないものと考えられます。

国分寺崖線の野鳥

それぞれの地区ごとの野鳥の生息状況を紹介します。ご覧になりたい地域をクリックしてください。

鳥類の確認種総目録

種名・分類は日本産鳥類目録第6版を使用ました。非繁殖期は平成14年10・11月・平成15年1月、繁殖期は平成15年4・6月に調査しました。

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