
国分寺崖線保全調査~昆虫調査 崖線の昆虫類
調査の概要
調査の目的
国分寺崖線上に位置している樹林地における昆虫類の生息状況を明らかにし、希少な昆虫類の保全、また種の多様性の確保を目的とした国分寺崖線の保全策を講じていくための基礎資料の蓄積 および周知を目的に実施しました。
調査の考え方
国分寺崖線に生息する昆虫類の種及び個体数を把握するため、崖線の緑地を代表する地域を任意に定め、サンプリング調査を行いました。
本調査では、
- 神明の森みつ池
- 成城三丁目緑地
- 大蔵三丁目公園
- 岡本静嘉堂緑地
の4ヶ所を崖線の代表的な緑地として調査対象地区に選定しました。
調査項目および内容
調査は以下3つの方法で実施しました。
1)任意捕獲調査(任意調査)
スィーピング(補虫網で捕獲する方法)・ビーティング(木の枝をたたいて落下した昆虫を捕獲する方法)および目視観察により生息する昆虫類を捕獲・記録しました。捕獲した個体の内、現地にて種の確認ができないものについては室内の持ち帰り、顕微鏡下で同定しました。
この調査の実施時期および時間帯は以下のとおりです。
地区名 | 調査季節 | 調査日時・時間帯 |
---|---|---|
みつ池 | 夏季 | 7月15日 10:00~12:00 |
秋季 | 10月21日 13:30~17:00 | |
成城三丁目 | 夏季 | 7月15日 13:30~16:00 |
秋季 | 11月2日 10:00~12:00 | |
大蔵三丁目 | 夏季 | 7月20日 13:30~16:00 |
秋季 | 11月3日 10:00~16:00 | |
静嘉堂 | 夏季 | 7月20日 10:00~12:00 |
秋季 | 11月3日 13:30~16:00 |
2)ライトトラップ調査(任意調査)
調査地区内の見通しの効く位置に、ロープを使って白布を展張し、ブラックライトと蛍光とをそれぞれ1本ずつ点灯させて集まってくる昆虫類を捕獲しました。調査は夏季のみ実施しました。調査地点では1時間半から2時間程度点灯させました。ライトトラップは各地区ごとに1箇所とし、集まった昆虫類のうち、現地で種の確認ができないものは室内に持ち帰り、顕微鏡下で同定しました。
この調査の実施時期および時間帯は以下のとおりです。
地区名 | 調査季節 | 調査日時・時間帯 |
---|---|---|
みつ池 | 夏季 | 7月15日19:30~21:00 |
成城三丁目 | 夏季 | 7月15日19:30~21:00 |
大蔵三丁目 | 夏季 | 7月20日19:30~21:00 |
静嘉堂 | 夏季 | 7月20日19:00~21:00 |
2)ベイトトラップ調査(定量調査)
調査地区内の任意の地面に穴を掘り、プラスチック製のコップを埋めてエサを入れて一晩放置し、翌朝捕獲された昆虫類の種類および個体数を記録しました。現地で種の確認ができないものについては室内に持ち帰り、顕微鏡下で同定しました。各地区・各箇所ごとのベイトトラップの設置個数は20個とし、エサ(ベイト)は次の通りとしました。
- 焼酎+カルピス
- 腐肉+カルピス
- サナギ粉+焼酎+カルピス
これらは各地点毎にほぼ同数ずつ設置しました。
この調査の実施時期および時間帯は以下のとおりです。前日の夕方(午後5時前後)に設置し、回収は翌日の午前中(午前9時前後)としました。
地区名 | 調査季節 | 設置日時 | 回収日時 |
---|---|---|---|
みつ池 | 夏季 | 7月15日 12:00 | 7月16日 7:30 |
秋季 | 10月21日17:00 | 10月22日 9:00 | |
成城三丁目 | 夏季 | 7月15日 16:00 | 7月16日 9:00 |
秋季 | 10月21日17:00 | 10月22日 9:00 | |
大蔵三丁目 | 夏季 | 7月20日 16:00 | 7月21日 9:00 |
秋季 | 11月2日 17:00 | 11月3日 9:00 | |
静嘉堂 | 夏季 | 7月20日 18:00 | 7月20日 8:30 |
秋季 | 11月2日 17:.00 | 11月3日 9:00 |
調査地の環境の概要
それぞれの調査対象地区の樹林地の状況、周辺環境などを紹介します。
調査結果の概要
「神明の森みつ池」「成城三丁目緑地」「大蔵三丁目公園」「岡本静嘉堂緑地」の4ヶ所の樹林地で確認された昆虫類は14目111科300種でした。この結果を「目」別に示すと以下のようになります。最も多く確認された昆虫はコウチュウ類、次いでカメムシ類でした。
目 | 全季節 | 夏季調査 | 秋季調査 |
---|---|---|---|
カゲロウ | 1 | 1 | 0 |
トンボ | 9 | 9 | 1 |
カワゲラ | 2 | 2 | 0 |
カマキリ | 1 | 1 | 0 |
バッタ | 12 | 6 | 8 |
ナナフシ | 2 | 2 | 0 |
ハサミムシ | 3 | 2 | 1 |
カメムシ | 51 | 38 | 22 |
アミメカゲロウ | 5 | 5 | 1 |
コウチュウ | 102 | 85 | 34 |
ハチ | 36 | 32 | 14 |
ハエ | 26 | 18 | 12 |
トビケラ | 2 | 2 | 0 |
チョウ | 48 | 45 | 8 |
合計 | 300 | 248 | 101 |
季節別の出現種数の割合を見ると確認種の71%(248種)が夏季調査で確認されており、秋季では29%(101種)程度となりました。これは調査年の 2004年の秋季に降雨日が多く、調査時期が11月にずれ込んだことにより、この時期の昆虫相を十分に把握しきれなかったことによるものと推察されます。
確認された昆虫類のリストを閲覧ファイルとして掲示しました。
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調査地区別の状況
各調査樹林地の中で、最も確認種数の多かった場所は「神明の森みつ池」で夏季111種、秋季51種で合計143種が確認されました。みつ池以外の調査地区では概ね同様です。確認種の少ない地区の「成城三丁目緑地」では夏季90種、秋季33種、合計110種でした。
No. | 目 | みつ池 | 成城三丁目 | 大蔵三丁目 | 静嘉堂 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
夏 | 秋 | 夏 | 秋 | 夏 | 秋 | 夏 | 秋 | ||
1 | カゲロウ | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2 | トンボ | 4 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 7 | 0 |
3 | カワゲラ | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
4 | カマキリ | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
5 | バッタ | 1 | 5 | 2 | 0 | 2 | 2 | 3 | 5 |
6 | ナナフシ | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
7 | ハサミムシ | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
8 | カメムシ | 20 | 8 | 15 | 10 | 17 | 6 | 13 | 6 |
9 | アミメカゲロウ | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 |
10 | コウチュウ | 43 | 17 | 32 | 9 | 24 | 11 | 31 | 11 |
11 | ハチ | 10 | 7 | 15 | 3 | 13 | 7 | 16 | 3 |
12 | ハエ | 6 | 5 | 9 | 0 | 8 | 5 | 6 | 6 |
13 | トビケラ | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 |
14 | チョウ | 23 | 7 | 12 | 0 | 25 | 4 | 17 | 2 |
計 | 14目 | 112 | 51 | 90 | 0 | 99 | 33 | 101 | 33 |
144種 | 110種 | 121種 | 125種 |
国分寺崖線の昆虫類
それぞれの調査対象地区の樹林地の状況、周辺環境などを紹介します。