ネット文庫
(NPO法人映画表現育成協会 FILMe)

 このページは「平成22年度公益信託世田谷まちづくりファンドネット文庫制作部門」の助成を受けて作成いたしました。

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ワークショップと、上映、映画祭による地域活性化とコミュニティづくりの効果

 まちや地域、風景や、建造物、お店や人の魅力を映像作品にして、作品の上映や、インターネット配信を通じてで多くの人に[まちとひと]の魅力を発信出来ます。
 お年寄りから子供たちまで、初めての者同士が、映像制作やイベント企画運営の共同作業をする事によって、コミュニケーションを学び、まちの人との深い繋がりを育むことが出来ます。
 多くの人が参加し、満足していただけることで、喜びと達成感を共有し、ますます、この街が好きになる事ができます。

 私たちの活動の中でも、もっとも、成功例と言える「地球と食の映画祭(2009年)」と通年の活動である「ワークショップ」を映像でまちづくりの参考事例としてご紹介したいとおもいます。

 FILMeでは、「映像」によって社会貢献を図ることを活動の目的としておりますが、市民(地域住民)の視点からは、FILMeの活動へ関わり方は二種類へ分類されます。

①FILMeの活動に直接参加する
②FILMeの活動に間接的に参加する

 ワークショップに参加する事は①に分類されます。
 映画祭で映画を鑑賞するという事は②に分類されることが多いでしょう。

 まずワークショップについて述べたいと思います。
※具体的な活動例はこちらをご参照下さい→こちら

 ワープショップを行う事で、「まちづくり活動」が「活性化」している、という結果を得るための条件はいくつか考えられます。

①参加する人が多い
②ワープショップの内容が面白い
③内容に「まちづくり活動」が盛り込まれている
④参加して参加者が満足する

 ①の「参加数を増やす」ための方法は、「告知」の方法論に他なりません。
 告知の方法はテレビ、ラジオ等の放送媒体を用いる、新聞雑誌等の印刷媒体を用いる等考えられますが、当団体の規模からは費用の面で現実的ではございません。
 現状では告知用のチラシやリーフレットを配布する、という方法を行っております。
 また、現在ではインターネットを利用した告知も一般的な手段となっております。
 (ホームページでの告知や、関連する掲示版への投稿など)
 最近では「口コミ」という宣伝も注目されており、mixiやFacebookなどのソーシャルネットワークの活用も有効で、こちらの利用も行っております。

 ②については「行事・活動・イベント」の本義と言えます。
 面白くするためには、「面白いネタ」を「面白く(見・魅)みせる」必要があります。
 「面白いネタ」は③に関係します。「面白く(見・魅)みせる」のは人が関係します。
 この「人」とはプロに他なりません。「面白くみせるプロ」と言ってもいわゆる「芸人」という事でなく、FILMeでは「映像」のプロという事になります。
 ここで挙げるプロとは「監督、脚本家、編集者、撮影者など」を指しております。
 ネタに相応しい「プロ」を選定して、ネタを膨らます様に内容(課題やテーマ)をプロと詰めていくのは企画側であるFILMeの仕事になります。

 ③のネタについて、「まちづくり活動」と関係する「モノ」とは、その地域の風景、構造物、お店、イベント、人などが挙げられます。
 世田谷を中心としたこの「モノ」をネタとして取り上げることが、まず「まちづくり活動」の一歩となります。
 モノ=素材がネタとして「面白い」(興味がある、魅力的、奥が深い等々…)か、一見変哲も無い素材に「原石」を見出せるかは、企画側の「目」に掛かっています。
 各方面にアンテナを張り情報を収集し、また「目」を養うよう研鑽する事は、FILMeとして重要な事となります。

 ④さて、ワークショップでの上記の条件が整い「当日」を向かえますが、④が満たされないと結果的に「活性化」とは言えません。
 FILMeのワークショップの主な企画は「映像制作」についてです。映像制作と言っても、映画、ドラマ、ドキュメンタリー、ニュース、コマーシャル、プロモーションビデオなどその内容(ジャンル)は様々です。
 共通して言えることは映像制作は「ひとり」では困難であるという事です。
 (「ひとり」で作成する例が無い訳ではありません)
 ワークショップの主旨の一つに、共同作業が挙げられます。参加者は条件で「限定」されている訳ではないので、年齢、性別、職業等バラバラな方が参加されます。
 参加者同士が共同して、あるいは分担して、コミュニケーションを取りつつ作業を行い、課題(テーマ)をクリアする事で、参加者は満足感、達成感を得る事が出来ると考えています。
 この事は即ち④を満たす事に他なりません。

 

 次に映画祭(イベント)について述べます。
(※こちらの活動内容をご参考下さい→こちら)

 参加者は「映画祭」あるいは「映画を見に」来ている訳で、そこに「企画者の活動」に参加している意識は無いという事をもって、「間接的な活動参加」としております。
 「映画際」=「まちづくり活動」という図式を成り立たせるためには、ポイントがいくつかあると考えられます。

①その地域で開催する
②映画のテーマ(題材や撮影地域など含む)がその地域に関係する
③スタッフ(出演者、運営者など含む)がその地域に関係する
④付帯するイベント等がその地域で行われる

 国内の映画祭では「夕張映画祭」や、最近では「沖縄国際映画際」など思い浮かべる方がおられると思いますが、これらの映画際はもちろん上記の①~④がそれぞれ少なからず関わっていると考えられます。

 FILMeが企画に携わった映画際として、「地球と食の映画祭」を例に挙げます。

 「地球と食の映画祭」で映画は下高井戸シネマにて上映されました(上記①に該当)。

 「地球と食」がテーマなので、特別に世田谷を対象とている訳ではありません。
 (特に②を意識している訳ではありません)

 上記③に関しても特に世田谷を対象している訳ではありませんが、運営スタッフ(ボランティア)は世田谷区中心と言えます。

 ④に関しては、「食」という事で映画に登場する「食事(レシピ)」を実際に再現してくれる飲食店を設けました。
 これは下北沢、三軒茶屋、下高井戸地区で合わせて26店舗で、各店舗によりそれぞれ異なったメニューを提供いたしました。
 映画際と実際の店舗(飲食店)がリンクする事によってる相乗効果と、人の流れを生む(映画館←→飲食店)効果は、「まちづくり活動の活性化」という点で一つのモデルになると考えられます。
 また、関連する書籍を書店で取り上げて頂いたり、関連グッズのブースを映画館に設置するなどして「自ら盛り上げる」事も「成功を導く」という点においては重要な要素と考えられます。

 「映画祭が成功する」=「まちづくり活動が活性化する」の図式を成立させるためには、地域、映画祭(あるいは映画自体)のテーマ、スタッフ、付帯イベント全てが「一つの大きなイベント」として機能して達成される様に、FILMe(企画側)は企画を立案し準備し運営する必要があります。

 一般的に企画の立案から実施までの行程として、

①企画立案の仕方、企画に至った経緯
②企画の持って行き先、筋の通し方、キーパーソンの発見
③協力者、応援者の取り込み
④予算立て、資金準備の方法、回収の方法
⑤当日までの準備、段取り
⑥宣伝、プロパガンダの方法と折衝
⑦当日の運営、気をつけるポイント
⑧運営終了後のポイント

などが考えられます。

 ここでは引き続き「地球と食の映画祭」を例にとり述べていきます。

 ①で、この映画祭の企画に至った経緯ですが、映画「上映会」では物足りなかったこと、映画以外のイベントを巻き込みたかった…という点がスタートになります。
 そこで、身近な「地球環境」と「食」に注目し「食」を通じて「地球」の恵み、大切さを認識させたいという想いから、これをテーマ「映画祭」を企画立案する事になりました。
 まず注目したのは映画に登場する「食」でした。そこで、雑誌AERA(朝日新聞社)に連載中の「シネマ食堂」(映画に登場した「ごはん」についてのコラム)に掲載されたレシピを世田谷の飲食店で再現し、映画祭の期間中に食べ歩きが出来るようなコラボ企画を考えました。

 ②に関してですが、直接AERAの編集部へ電話をかけ企画を持ち込みました。
 ここで①とも関連しますが、「シネマ食堂」の連載が100回を向かえ、単行本が出版されるのでは?と考えたのが、企画の経緯でもあります。
 単行本化の件はその通りで、この企画は販売促進になるとの担当者や編集部が考え、また「シネマ食堂」執筆者の飯島奈美(フードスタイリスト)さんが大変喜んだ事が、実現への大きな要因でした。

 ③で、②までではまだ「紙の上」という事で具体的ではありません。この映画際に必要な「映画館」と「飲食店」を確保する必要があります。
 「映画館」は前述の飯島さんが手がけた映画「南極料理人」の評判が良い事、AERA編集部が協力している事もあり、下高井戸シネマでの上映が決まりました。
 「飲食店」も地域商店街の有力者や、有名店の社長が乗り気になる事で、合計26店舗の協賛(協力)店を得られました。
 なかなか徒手空拳では協力を得られる事は難しいです。しっかりとした「裏づけ」(バックボーン)を基に交渉する事が必要です。

 ④については重要な問題です。映画際で上映する映画についてもその費用は定かではありません。チラシやパンフレットやポスター作製費用の分担についても検討が必要です。
 映画の方についてはチラシやポスターの印刷、上映フィルムのレンタル費用、トークゲストなどの出演料は映画館の興行という事で下高井戸シネマが負担しました。
 (この時点で映画祭の主催は事実上「下高井戸シネマ」という事になります。FILMeは黒子として企画運営していく事になりました。)
 協賛の飲食店マップについては、世田谷区の助成金を別途頂く事ができそれで作製しました。
 他のポスター、チラシ類の作製、ボランティアスタップ等の経費はトラストファンドの助成金を充てました。
 下高井戸シネマからは、映画祭終了後にFILMeに寄附金を頂きました。

 ⑤では実際に「GO」になってからも作業は続きます。
映画祭で上映する映画の選定を行いました。また上映作品の公募という形を取り、応募作品から上映作品を選定しました。
 「地球、食」に関するトークショーも企画し、ゲストとして食の研究家、アーティスト、大学講師、作家、オーガニックやエコにこだわるメーカーなどに出演交渉を行いました。
 スタッフ募集のチラシ配布、イベントのチラシ、ポスターの配布と掲示を適宜行いました。
 大量のチラシ配布にはボランティアスタッフの協力が不可欠です。
 当日の映画館に専用ブースの企画を立て、関係者の出展をアレンジしました。

 ⑥の宣伝(告知)の方法ですが、ポスター掲示やチラシ配布、インターネットでの告知が主なところになります。
インターネットページも制作して立ち上げました。
 今回、本の販促活動の面もあり、書店に対してのプロモーション活動も行いました。
 本の平積みコーナーの提案から、POPの設置、チラシの設置、協賛店マップの設置を行い、世田谷の大型書店への協力を頼みました。
 ポスターやチラシは「量」もありますが、「質」も重要なポイントです。デザインはプロに頼むのがやはり良く、デザイナーの質がまた命です。
 ポスターやチラシに「何が書かれているか?」はまた重要で、協力、協賛、後援などの記載内容によって、相手の協力の仕方が変わってきます。この点から早めの交渉は欠かせません。

 ⑦さて当日ですが、スタップの人員には余裕があった方が良いです。突然、当日欠席という事の想定は必要です。
 また、動きに関して各種シミュレーションを行うことも必要です。
 細かい事ですが、飲み物、食事(弁当)の準備はスタッフのモチベーションにかなり関係のある所でした。

 ⑧企画終了後は気が抜けがちですが、おろそかには出来ません。
 関係各所、協賛、協力の方々、企業、店舗等へのお礼は必ず行いましょう。
 お礼一つで次の展望、人間関係に影響与える可能性を、充分に考える必要があります。
 また、会計報告を作製して残すことは、次の企画(イベント)立案、開催への大きな財産となります。

 参加者向けに企画を立て、開催して、その効果が現れる…という事は、「まちづくり活動」を念頭に置いたこの企画の場合は「活性化」した結果と言えると考えます。
 別の視点では、企画、協力側の反応も重要です。

 今回の映画祭の場合、協賛した各店や、編集部の方々、執筆者にも好評で、上映終了後にはボランティアスタッフも含め、実際の食事を味わえる各協賛店へ足を運ぶという具合でした。

 地域や関係者から「またやって欲しい」と言われたことは、「企画冥利につきる」と言える部分と思っております。

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